非営利団体 (NPO) における戦略計画の立て方 (テンプレート付き)

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2024年2月29日
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概要

どんな組織にも戦略計画が必要です。もちろん非営利団体も例外ではありません。戦略計画とは、組織の現状、達成しようとする目標、目標を実現するプロセスを定義する手段です。Asana のテンプレートを使えば、4 つのステップで戦略計画を作成できます。現状を評価し、戦略を考え、計画を立てましょう。

更新: この記事は、非営利団体 (NPO) とは何か、その定義に関する記述を含めて 2023年 3月に改訂されました。

戦略計画は、例えるなら歯ブラシのようなものです。誰でも持っているべきで、毎日使わないと困った事態に陥ります。非営利団体 (NPO) にとっても、戦略計画は欠かせません。

この記事では、戦略計画の基本や、戦略計画があなたの組織の成長にもたらすメリットについてご紹介します。非営利団体向けの戦略計画の詳細や計画の立て方を知り、さらにヒントとして、付録の Asana の非営利団体向け戦略計画テンプレートをご覧ください。

非営利団体とは何ですか?

非営利団体とは、営利を目的としない組織のことを言います。日本語では他にも「非営利組織」や、英語の Non-profit organization の頭文字を取り「NPO」とも呼ばれます。

また、非営利団体は政府とは別組織であり、人々が自主的に集まる活動団体です。つまりその構成員は利益を得ることはありません。多くの場合、非営利団体の目的は社会貢献活動です。

NPO と NGO の違い

非政府組織 (NGO) と明確に定義分けはされていませんが、一般的に海外で国際協力に従事する団体を NGO、身近な場所で活動する団体を NPO と呼びます。たとえば、まちづくり、地域の子どもの健全育成、学術、文化、芸術、スポーツの振興を図ったりといった活動例が挙げられます。

非営利団体の例は?

NPO は 1998 年の特定非営利活動促進法 (NPO 法) により、法人格が与えられました。非営利団体の例として、次のような組織があります。

  • 一般社団法人

  • 一般財団法人

  • 公益社団法人

  • 公益財団法人

  • 社会福祉法人

  • NPO法人

  • 認定NPO法人

非営利団体向けの戦略計画とは?

初めて戦略計画を作成するにも、既存の計画を見直すにも、その過程でしかるべき関係者を参加させ、意見を求めることが重要です。経営幹部や上級管理職、そして今後、組織の長期的な成功に貢献してくれる主要なチームメンバーを集め、戦略計画チームを編成しましょう。

非営利団体にも戦略計画は必要です。明確な戦略計画を立てて、非営利団体の目標と、その目標を達成するために必要な行動を定義しなければなりません。

非営利団体での戦略計画プロセスと、それ以外の組織や業界で実施されているプロセスに本質的な違いはほとんどありません。仕事の形態がどうあれ、組織の目標とそれを達成するためのアクションを定義するには、戦略計画が必要です。

記事: 7 つの戦略計画モデルと計画プロセスをスタートするのに便利な 8 つのフレームワーク

それだけでなく、組織が新たな課題に挑戦し成長し続けていくためには、3 年から 5 年ごとの戦略計画の見直しが欠かせないことを忘れないようにしましょう。

戦略計画とは?

非営利団体向けの戦略計画を作成する方法

非営利団体向けの成果をもたらすアクションプランロードマップを作成するにあたって、まず戦略計画を立てる 4 つのステップを見ていきましょう。

  • ステップ 1: 現状を評価する

  • ステップ 2: 戦略を立案する

  • ステップ 3: 戦略計画を立てる

  • ステップ 4: SMART な目標を作成する

ステップに従って戦略計画を立てたら、次は KPI (重要業績評価指標) を設定し、達成するべきマイルストーンのスケジュールを作成して成功へと邁進してください。

効果的な目標を設定する方法

ステップ 1: 現状を評価する

どんな目標を立てるか考える前に、現時点の状況を評価しましょう。所属する非営利団体について集められる限りの情報を集めて、団体がどんな組織であり、どんな状況にあるのかを戦略計画チームが明確に理解できるようにします。

次の項目に着目して、現状を評価しましょう。

  • 基礎データ

  • 成功と目標

  • 資金

  • 関係者

  • 強み、欠点、機会、脅威

では、それぞれについて詳しく見ていきます。

団体の基礎データ

組織の基礎データを集めるには、以下の質問を投げかけてみましょう。中には重要性が低いように見えるものもありますが、戦略計画チームが認識を揃える上でも、すぐ答えの出る質問から始めましょう。

  • 組織の規模は?

  • 組織の拠点は?

  • 年間純資産は?

  • 職員数は?

  • 活動のターゲット層は?

成功と目標

詳細の検討に入る前に、過去に達成したことを確認することをおすすめします。団体の強みや成長機会がより明確になるだけでなく、戦略計画チームに前向きで楽観的なムードが生まれ、計画を立てるプロセスがより楽しく、取り組みやすくなります。なお、強みや成長機会についてはプロセスの後半で詳しく分析します。

  • これまでの最大の成果は?

  • 将来の目標はあるか?

  • これらの目標についてどの程度検討しているか?また、目標はSMART な目標の基準を満たしているか?

資金

非営利団体にとって、利益を上げることは主要な目的ではないかもしれませんが、社会的な影響力をもたらす活動には資金が必要です。ここでは、現在の資金源となっているものを確認します。

  • 政府の助成金を受けているか?

  • これまで、資金調達はどの程度成功しているか?

  • 支援者やスポンサーは誰か?

  • その他の資金源はあるか?

  • これまで検討していない資金源はあるか?

  • 自団体での助成金管理は通常どのように行われているか?

関係者 (ステークホルダー)

関係者分析は、戦略計画を作成する上での重要なポイントです。団体内外の関係者は事業の成功に影響を及ぼすため、誰が関係者であり、どのような役割を担っているかを知る必要があります。

団体内の関係者とは、戦略計画に直接影響を与えるチームメンバーであるため、すでに戦略計画チームに属している場合が多いでしょう。一方、外部の関係者とは、通常は代理店やクライアントといった、団体のパフォーマンスに財政面で関与するなどのさまざまな形で貢献している人や組織です。

  • 団体内外の関係者のうち、特に重要な関係者は誰か?

  • これらの関係者が団体に賛同している理由は何か?

  • 団体がこれらの関係者から必要としているものは何か (例: 労働力、資金、マーケティングなど)?

  • 自分たちがこうした関係者を信頼する理由は?

強み、欠点、機会、脅威

最後に、「SWOT 分析」を行って団体の強みや弱みを見つけ、外的な脅威や機会によって団体の成功にどのような影響が出る可能性があるか見極めましょう。

  • 業界のほかの非営利団体より優れている点は?

  • 過去のイベントで、団体の成功に影響を与えたものは何か?また、その理由は?

  • 過去に、団体の持てる力をフルに発揮できない原因となった弱みはあるか?

SWOT 分析を行ったら、次の段階へ進み、戦略を立案しましょう。

ステップ 2: 戦略を立案する

戦略計画を立てるプロセスのこのフェーズでは、ステップ 1 で集めた情報を基に、メンバーで知恵を出し合い、組織の理想的なあり方、つまり組織の価値観、ミッション、そしてビジョンステートメントを定義します。

ミッション、ビジョン、価値観の定義

ミッションとビジョンステートメント

まず、ミッションステートメントとビジョンステートメントから始めましょう。すでにこれらのステートメントがある場合は、新しい戦略に合わせて更新する必要がないか再検討します。

非営利団体のビジョンステートメントやミッションステートメントの作成に悩むこともあるでしょう。そんな場合は、他の団体がどのように理想を文章にまとめているかを見ると参考になります。ここでは非営利団体が定義しているビジョンやミッションを 3 例ご紹介します。

ビル & メリンダ・ゲイツ財団

ビル & メリンダ・ゲイツ財団のミッションステートメントとビジョンステートメントは密接につながっています。財団の「すべての人が健康で充実した人生を送れる世界の実現」というミッションに対し、そのビジョンは「すべての人が健康で充実した人生を送れるように支援する」というものです。

米国赤十字社

米国赤十字社のミッションステートメントは、「ボランティアの力と寄付を活用し、緊急事態における人道危機」を回避し、軽減するというものです。

一方、ビジョンステートメントは「米国赤十字社は、ボランティア、寄付者、パートナー組織の強力なネットワークを活用し、困難に際して常に現場に駆け付ける。我々は、寄り添う心を行動に移すことを志とする」となっています。

ニューヨーク州立大学研究財団

ニューヨーク州立大学研究財団は、「ニューヨーク州立大学における研究、イノベーション、世界の知識経済に転換をもたらす発見の実用化を支援するため、才能、サービス、テクノロジーを提供する」というミッションを掲げています。

また、そのビジョンは、同大学を「学部、学生、教職員にとって、研究を行い、イノベーションをもたらし、世界の緊急課題を解決するための最良の場とすること」というものです。

非営利団体の価値観

次に、あなたの団体の軸となる価値観、つまりコアバリューを定義します。あなたの団体の価値観を表し、ミッションやビジョンに沿った言葉を 5 ~ 10 個、定義してください。

以下に例を挙げます。あなたの団体が掲げる価値観も含まれているかもしれません。

  • 信頼性

  • 革新性

  • 誠実さ

  • チームワーク

  • サービス

  • 多様性

  • 信用

  • 忠誠心

  • 正直さ

  • コミュニケーション

  • 公正さ

  • 安全性

  • 他者への尊重

  • 包摂性

  • 機動力

  • 透明性

団体の現状を評価し、そのあり方を定義することは、戦略計画の作成プロセスにおける重要な 2 つのステップです。これを土台として、計画そのものを立てていきましょう。

ステップ 3: 戦略計画を立てる

戦略計画の中心となるのは、戦略上の優先事項と今後の目標です。実施計画の基本になるこれらの要素によって、究極的には新しい戦略の有効性や成功が決まります。

SWOT 分析で突き止めたことに基づいて、戦略上主となる優先事項を 3 つ以上選びましょう。たとえば、SWOT 分析で資金源が 2 つしかないことを確認した場合は、「資金源の多様化」を戦略上の優先事項にするなどです。

戦略上の優先事項は、この段階で完璧である必要はありません。詳細は次の最後のステップで詰めていきます。

ステップ 4: SMART な目標を作成する

新たな戦略を行動に移し、成功に至るには、SMART な目標の作成が不可欠です。

SMART な目標とは、具体的で (Specific)、測定可能 (Measurable)、達成可能 (Achievable)、現実的 (Realistic) で、期限がある (Time-bound) 目標です。たとえば資金源を多様化するための SMART な目標は、次のようになります。

「今後 3 年間で、四半期ごとに政府の新しい助成金に 1 件ずつ応募し、SNS (Instagram、Facebook、Twitter) 上で資金集めの月例イベントおよび年 2 回の対面のチャリティイベントを開催することによって、現在の資金源に新たな資金源を 7 つ以上追加する」

非営利団体向けの戦略計画テンプレートと使用例

Asana のテンプレートを使って、所属する非営利団体のために、成果をもたらす戦略計画を立てましょう。利害関係者や経営陣、主要なスタッフにも計画のプロセスに必ず参加してもらってください。彼らのインサイトやアイデアがあなたの団体の未来を形作るのです。

例として、非営利団体の戦略計画の書き出しの部分を見てみましょう。

非営利団体向けの戦略計画テンプレート使用例

下のボタンをクリックすると、テンプレートをダウンロードできます。あなたの団体のニーズに合わせてカスタマイズしてお使いください。

非営利団体向け戦略計画の無料テンプレート

計画を実行に移しましょう

非営利団体 (非営利組織) とは何か、その定義と戦略計画の立て方を解説しました。

戦略計画を立てたら、あとは実行するだけです。戦略計画の実施に漕ぎつけると、達成感と共に不安も感じるものですが、これまでの計画段階の苦労がやっと実りを迎えるときでもあります。

戦略計画を具体的なアクションへと発展させ、それぞれのステップを追跡して管理し、戦略プロジェクトの詳細を関係者やチームメンバーと共有するには、このプロセスをサポートしてくれる Asana の目標設定ツールを活用しましょう。

Asana で目標を設定し、達成する

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